翌朝、咲はベッドで少し体を起こしてみた。
 「……お兄ちゃん、今日は外に出てみたい」
 「無理はしないこと。少しだけならいいよ。」
 咲は窓から差し込む朝の光を手で受け止めるように伸びをした。
 その姿に、兄は未来への希望を重ねて見た。

 だが、心の奥ではまだ不安も消えていなかった。
 「このまま順調にいくのか……?」
 「退院後の生活はどうなる?」
 病気はまだ完全に消えていない。運動制限も薬の管理も続く。
 兄として、医者として、守らなければならない責任は重く、終わりはまだ見えない。