「……怖いよ」
 ようやく漏れた声は、子どものようにか細かった。
 「私、死ぬの怖い。生きるのも怖い。でも……お兄ちゃんが一緒に居てくれるんだったら、、やってみてもいいかも。」

 その言葉に、兄は胸の奥が熱くなる。
 握った彼女の手は冷たかったが、確かに力が返ってきた。

 「咲。絶対にひとりにはしない」
 「……ほんとに?」
 「本当。」

 咲は小さく頷き、窓の外を見上げた。
 暮れかけた空に、一番星が淡く瞬いている。
 その光は、二人にとって危うくも確かな道しるべのように見えた。