「咲、聞いてほしいことがある」
 俺はベッドのそばに座り、真正面から妹を見つめた。
 「治療方針を決めた。――新しい方法を試そうと思う」

 咲の目が大きく見開かれる。
 「新しい……? 危険なんでしょ」
 「リスクはある。でも、もし成功すれば今よりずっと楽になる。……体育祭だって、修学旅行だって、行ける可能性がある」

 その言葉に、咲の唇が震えた。
 「……お兄ちゃん、それ本気で言ってるの? 私を実験台にするってこと?」
 「違う!」
 思わず声が荒くなる。
 「俺は、妹としてのお前を助けたい。ただ生き延びるんじゃなくて、今をちゃんと“生きて”ほしい。」