咲は薬のシートを机の上で乱暴に弾き飛ばした。小さな白い錠剤が床に散らばる。
 「運動もできない。友達と遊びにも行けない。体育祭も見学ばっかり。もう、生きてる意味ないじゃん!」

 その言葉は、予想していたはずなのに胸を刺した。
 僕は拾い上げた錠剤を手のひらに乗せ、彼女の視線と同じ高さにしゃがみこんだ。

 「咲。……生きてる意味なんて、あとから探せばいい。今はただ、生きていてほしい」
 「お兄ちゃんは医者なんだから、そう言えるんでしょ。私の気持ちなんて、わかんないよ」

 彼女の声は震えていた。怒りと涙が混ざったような、どうにもならない響き。
 僕も言葉を失ったまま、床に散らばった薬をひとつひとつ拾い集めた。