――なら、どうすればいい?

 兄として守りたい気持ちと、医者としての責任。
 その境界線の上で、僕はようやく一つの答えに辿り着いた。

 「咲。……お前の好きなことを一緒に見つけよう。走れなくても、運動できなくても、できることは必ずある。俺と一緒に探そう」
 「……お兄ちゃんと?」
 「そうだ。医者としてじゃなく、兄として。……約束する」

 咲はしばらく黙っていた。
 やがて、涙をこらえた顔で小さく頷いた。
 「……ずるい」

 その言葉に僕は初めて安堵の笑みを浮かべた。
 境界線の上で迷っていた僕は、ようやく「兄」として彼女のそばに立つ決意をした。