癒やしの小児科医と秘密の契約

「……二人、打ち解けてるようでよかったけど」

珍しくちょっぴり棘のある言い方をする先生に疑問を持ちつつ、そういえば拓海くんは大学の後輩だということを伝えていなかったことに気づく。だからどうってことはないのかもしれないけれど、ちゃんと誤解のないように言うべきなのだろう。

「先生、実は拓海くんは大学の後輩なんです。同じテニスサークルだったんですよ」

「心和、テニスやってたんだ?」

「そうなんですよー。こう見えて意外とスポーツできますよ」

「へえ、知らなかったな」

「ってか、先生ご飯は?」

「まだだけど」

「半分食べますか?」

佐々木先生も忙しかったんだろうな、今日もお疲れ様だなと思ったのだけど、「ちゃんと食べなさい」と本気トーンで叱られてしまった。

そりゃそうか、先生だって私の食べかけなんていらないよね。しょぼぼんとしながらお弁当を食べる。と、優しく頭をぽんぽんと撫でられた。

「優しいね、心和は。さてと、食堂はもう閉まってるだろうし、何か買ってくるかな」

ニコッと笑って佐々木先生は部屋を出ていった。その姿を見送りながら、違和感を感じて首を傾げる。何だろう、いつもと何かが違うような。

「佐々木先生と仲良いんですね」

「あ、うん、そうだね」

「俺、邪魔でしたよね」

「え、なんで?」

「思いっきり牽制されたような」

「牽制……?」

ようやく気づいた。さっき感じた違和感はこれだ。佐々木先生は私のことを「川島さん」じゃなく、「心和」って呼んでいた。二人っきりのときはそう呼ばれるけれど、誰かがいる前では絶対に名前で呼ばなかったのに。

もしかして拓海くんといるから?
だから名前で呼んだの?
それが牽制ってこと?

「そうなのかな?」

「そうでしょう? だってお弁当も持ってないのに入ってきたんですよ」

確かに、言われるとそうだ。そんなこと、まったく思いもよらなかった。もしかして、嫉妬してくれてたりして。いやいや、釈迦佐々木に限ってそんなことあるはずがない。ないでしょう?

でも――