新しい年度になり、新人看護師が二人入職した。小谷莉々花(こたにりりか)ちゃんと牧野拓海(まきのたくみ)くんだ。院内の男性看護師はまだ少なく、小児科に配属されるのも初ということで少しばかり話題になっている。

「あれ、もしかして拓海くん?」

「そうですよ、心和さん」

「わあ、すごい偶然」

「なに、知り合い?」

「はい、大学の後輩で――」

彼は私の一つ年下の後輩で、同じテニスサークルにいた。でも一年で大学を辞めてしまったから、まさか看護師になっているとは思わなかった。

「実は大学はしばらく休学して、復学して学び直しました」

「そうだったんだ。これから一緒に頑張ろうね」

「はい、よろしくお願いします」

ついに私も先輩だ。先輩らしく、頑張らなくちゃと気合いも十分。教育係にも抜擢されて、ますます気を引き締める。

佐々木先生とお付き合いしていることは隠しているわけじゃないけれど、あえて言うことでもない。だから仕事もいつも通りけじめをつけること、公私混同しないことを先生と話し合った。

完全なる通常運転、通常営業。そう、浮かれている場合ではないのだ。新人の教育をしつつ、私だってまだひよっ子なんだから、ミスのないように細心の注意を払って仕事をする。

年度始めって、どうしてこう忙しいのだろうか。毎日目の回るような忙しさで佐々木先生を拝む時間すらない。もちろん、プライベートは会ったりするけれど、たまには仕事中のご褒美がほしい。佐々木先生を拝みたい。

そんなささやかな願いすらも、雑作業に忙殺された。特に今日は忙しくて、拓海くんも引きずり回してお昼休憩の時間がズレてしまった。

休憩室でお弁当を広げながら、うーんと伸びをする。

「やっとご飯ー」

「さすがにしんどかったです」

「ねー。お疲れ様。さ、食べよ食べよ」

お互い、持参したお弁当を食べながら午前中の仕事を労う。