翌朝目が覚めるとまだ部屋は薄暗くて、いつもだったら目覚ましが鳴る前だからもう少し寝ちゃおうと思うのに、今日はバチッと覚醒した。なぜならば、目の前に佐々木先生の綺麗な顔があったからだ。

やばい、眼福。
寝ている佐々木先生が拝めるなんて、何という幸せ。

しばらくじーっと見つめていたら、ふと目が開く。眠そうにまた瞼が落ちていき、ふいに腰を引き寄せられた。

「……何見てるの」

目は閉じたまま、とんでもなく眠たそうな声の佐々木先生。こんな姿、見たことないから貴重すぎる。

「先生のお顔です」

「……まだ眠い」

先生は私を抱きしめ直すと、また眠りに落ちていく。密着したせいで顔が見られくなってしまった。代わりに、先生の胸にぴったり顔を寄せる。トクトクと規則的に聞こえる心臓の音。そんな音を感じられるだなんて、それだけ先生に近いということを示しているかのようで嬉しくなってしまう。

もぞもぞと、私も先生の背中に手を伸ばした。
ああ、温かい。幸せ。

どれくらいそうしていたのだろう。目覚ましのアラームはまだ鳴らない。夢うつつのふわふわした感覚の中で、何かが唇に触れた気がして目を開ける。

バチンと目が合ったのは佐々木先生で、とんでもなく爽やかな顔で「おはよう」と微笑んだ。さっきの寝ぼけ眼は夢だったのだろうか。それとも私の妄想か幻覚か。

「おはよう……ございます……?」

「朝起きて、心和がいるっていいね。今日も頑張れそう」

「……はい」

「寝ぼけてる」

「……うん」

「あはは、可愛っ」

体を起こし、乱れた髪を手櫛で整えてくれる。
こんな寝起きでスッピンで髪の毛がボサボサでも、可愛いって言ってくれるなんて、神様なのかな?

「先生、おはようございます」

「はい、おはよう」

ニコッと笑顔が眩しい。
あ、お釈迦様か。
そういえば先生は釈迦佐々木だった。