ガタンゴトン……揺れる電車が心地良くて、あっという間に意識が飛んだ。
心地良いのは隣に佐々木先生がいたからかもしれない。

ああ、今日は佐々木先生の隣に座れて、いろいろお話できて、夢みたいだったなぁ。いっぱい困らせちゃったけど、困った顔の先生も新鮮で、そんな顔が見られただけでもお得な気分だった……。

「――さん、川島さん?」

「ん……」

「ほら、立てる?」

「はい……」

きちんと立って歩いていたつもりだったけれど、どうやらずっと佐々木先生に寄りかかっていたみたいで、頭の上から「うーん、困ったな」という先生の呟きが聞こえた。

何が困ったんだろう。私だったらちゃんと一人で帰れるのに。それより先生の手を煩わせて申し訳なかったなと思う。

「先生、今日はありがとうございました。送ってくださってありがとうございます。おやすみなさい」

「いやいや、何を言っているの」

「ん? さよならのご挨拶ですけど」

「飲みすぎてると思うから、休んでいった方がいいよ」

「大丈夫、帰れますよ」

「俺が心配なんですけど……」

「心配? 心配してくれるんですか?」

「そりゃするよ。川島さん、フラフラなんだから。ここどこだと思ってるの?」

「え、最寄り駅?」

「家どこ?」

「あっち?」

指差すも、あれれ、私の家はどっちだっけ?
えーっと、今改札を出たところだから、右にまっすぐ行って……。

「先生、お家がわかりません」

「だろうね」

佐々木先生は困ったように眉を下げて笑った。
また私は先生を困らせてしまったみたいだ。
そんなつもりは毛頭ないのに。

「川島さん」

「はい」

「うちにおいで」

「はい?」

たっぷりと思考を巡らせながら、何を言われたのか理解しようとする。けれど全く理解ができなかった。私は酔っているのかもしれない。