薄暗いとはいえ、人目も憚らず抱きしめ合ってキスをしてしまった。そんな大胆なことを私の人生においてするとは考えもよらなかったけれど、佐々木先生に溺れているから何でも受け入れてしまいそう。

ああ、もう無理。
1ミリも離れたくない。

「先生大好き。帰りたくない」

「俺も、心和のこと帰したくないなと思ってた」

「まだ一緒にいてもいいですか?」

「心和さえよければ、うちにおいで」

そんなの、行くに決まっている。大好きな佐々木先生にどこまででもついていく。幸せメーターが振り切れてやばいことになっている。

サービスエリアの売店でちょっとだけ食べ物を買って、先生の車に乗り込んだ。運転している姿をチラッと見たら、先生もチラッと見てくれて……。

「えへへ」

やばい、わけもなく照れる。
両想いって、こんなにもくすぐったい気持ちになるものだったんだ。

ていうか両想い?!
本当に?
夢じゃないよね?
大丈夫だよね?
隣りにいるの、イマジナリー佐々木じゃないよね?

「あー、心和サン? ほっぺたをつねるのは止めなさい」

「だって、夢かもしれないって思って」

「運転中は何もできないから、大人しくして」

「な、なななな、何をするんですかっ」

「ほっぺたナデナデとか? 何を想像したの?」

「べっ、別に何も?」

本当、何も想像していない。想像や妄想は得意分野なのに、想像以上の出来事に遭遇すると頭がショートするというか、なんというか。

「えっと、とりあえず落ち着くために、大人しく先生のこと見てますね」

「俺のことドキドキさせてどうするの」

「ドキドキしてほしいです。だっていつも私だけがドキドキしてるので」

「そんなことないと思うんだけどなあ」

「そんなことあるんですよ」

運転している横顔がかっこいい。もう、佐々木先生のすべてがかっこいい。かっこ悪いところなんてないんじゃないだろうか。

完璧すぎてだんだん不安になってくる。あんなに私のこと好きになってほしいって思っていたのに、私なんかでいいのだろうか。見劣りしないだろうか。