「ほら、他に佐々木君とお見合いしたい子いないの? ちょっと待ったぁって、ねるとんみたいにさぁ」

「部長、年齢バレますよ」

「ていうか、セクハラになるからその辺でやめといたほうが」

ざわつき始めた小児科メンバーたち。
ダメダメ、他に立候補なんてダメ!

「皆さんは立候補しないでくださいぃ〜」

「わああ、落ち着いて、心和ちゃん」

「そうよ、誰も立候補しないから安心して」

「泣くな泣くな。ほら、佐々木先生、責任取って」

「責任って……」

ますます困惑の佐々木先生は、今まで見たこともないような顔で私を見る。そんな先生もかっこいいと思いつつ、涙がぽろりとこぼれた。佐々木先生のこと、誰にも取られたくない。

「ふえっ」

「ああ、だから泣かないの、心和ちゃん」

意図とせず涙を見せてしまったせいか、慌てふためく同僚たち。
そんな私たちを達観したように、余裕の表情でゲラゲラ笑う部長先生。

新年会は私のせいでカオスになってしまった。

その後もヤケ酒のようにビールを何杯か飲み、みんなに慰められる始末。みんなは私が佐々木先生を好きだって薄々気づいていたみたいだ。それに対して佐々木先生が脈ナシで……。

というより、誰に対しても態度が同じだから、もしかして恋愛に興味がないんじゃないかと思われているらしい。だけど、なんかもう、途中から会話の内容をよく覚えていない。

「まあなんだ、佐々木君。川島さんにそこまで言わせたんだから、家まで送ってやりなさい」

「そうですよ、心和ちゃんが飲みすぎたのは佐々木先生のせいですよ」

「先生のせいじゃないですぅ。飲みすぎてないですぅ」

反論してみたものの、「はいはい、わかったわかった」と軽くあしらってくる先輩方。部長先生と先輩方の粋な計らいで、私は佐々木先生に送ってもらうことになったのだけど――。