癒やしの小児科医と秘密の契約

実は自分で焼くお好み焼き屋さんは初めてで、大きなヘラを触るのも初めてだ。でもテレビでも見たことあるし、ヘラを差し込んで勢いよくひっくり返せばいいってことはわかる。

「じゃあ、やってみます。せーの、えいっ!」

絶対完璧にひっくり返せたと思ったのに、お好み焼きは無残にも半分に割れてぐしゃりと崩れる。しかも先生の方のお好み焼きにべしょっと侵食した。

「あっ!」

「あはははは」

「ちょ、先生、笑いすぎです」

「だって、そんなに上手に崩してくるとは思わなかったし。あはは!」

「先生のとくっついちゃった」

「いいじゃん。俺のもひっくり返して」

「えっ、また失敗するかも」

「練習してみよう」

ドSの佐々木先生に促され、二枚目のお好み焼きも頑張ってひっくり返す。集中してタイミングを見計らったのに、無残にもべショッと崩れ落ちた。鉄板の上にはぐしゃぐしゃのお好み焼きが広がる。

「あはははは」

あまりにも下手くそな返しにズーンと落ち込むも、目の前の佐々木先生はお腹を抱えて大爆笑している。

佐々木先生がそんな風に笑い転げているのを見るのは新鮮で、笑われているのに全然嫌な気分にならなくて、むしろもっと笑っている先生を見たいと思う。もっと先生を笑わせたい。失敗じゃない、何かで。

「先生、どうしよう」

「大丈夫大丈夫。お好み焼きなんて崩れてもどうにでもなるよ」

先生は大きなヘラで器用に形を整えてくれた。二つのお好み焼きがくっついて、一つになる。ソースやマヨネーズ、鰹節をかけたら、崩れたのが嘘のように美味しそうなお好み焼きが出来上がった。ソースが鉄板に滴り落ちて、ジュッといい音を立てる。

焼けたお好み焼きをヘラで切って、先生が取り分けてくれた。私と違ってとても器用だ。

「じゃあ、いただきまーす。んー、美味しい」

ひっくり返すときに崩してしまったからか、牛すじも明太チーズも、混ざっている。でも美味しい。

パクパク食べていると、先生にじっと見られていることに気づいた。