癒やしの小児科医と秘密の契約

「まったくもう、川島のSはドSのS」

「えっ、なんで川島のシから取るんですか。そこはKでしょ」

「うーん、川島のKは可愛いのK」

「はうあっ!」

「心和のKも可愛いのK」

「あわわ……」

「もしかしてドキドキした?」

もしかしても何も、ドキドキするに決まっている。前触れもなくそういうことを言わないでほしい。耐性がついていない私には刺激が強すぎる。胸のあたりを押さえてみるも、一向に収まりそうにない速すぎる心臓の鼓動。一体どうしてくれよう。

「ちょっと、もう、やめましょう。生きて帰れる気がしません」

「生きて帰す気はないよ」

「先生、医師としてあるまじき言葉のチョイス」

「あはは、確かにね。そんなこと心和にしか言わないよ」

楽しそうに笑う先生が、夜なのに眩しく見える。本当に、そんなことを言われたら勘違いしてしまう。もしかしたら佐々木先生が、ちょっぴり私に興味を持ってくれたのかもって。そうだったら嬉しいのに。

「あー、お好み焼き食べたいな」

「あ、いいですね。お好み焼き好きです」

「焼いてもらうお店と、自分で焼くお店、どっちがいい?」

「自分で焼きたいです。大きいヘラでひっくり返すのやってみたい」

「よし、じゃあそこに行こう」

佐々木先生に連れられて、自分で焼くタイプのお好み焼き屋さんに入った。暖簾をくぐると、ソースと鰹節の香ばしい香りが漂う。とても賑やかなお店だけど、席ごとに高めの壁で囲まれていてちょっとした個室のよう。鉄板を挟んで向かい合わせに座った。

佐々木先生は牛すじお好み焼き、私は明太チーズお好み焼きを注文。運ばれてきた具材をぐるぐると混ぜて、鉄板の上にジュッと広げた。

「先生、このお店よく来るんですか?」

「いや、久しぶりに来たかな。学生の頃は友達とよく来てたよ。メニューに学生用お好み焼きってあったでしょ。めちゃくちゃでかくて安い、学生にはありがたいメニュー」

「そんな大きいの、ひっくり返せるんですか?」

「うーん、たいてい失敗する。はい、心和。そろそろひっくり返して」

大きなヘラを二つ、渡してくれる。