癒やしの小児科医と秘密の契約

春に近づき日の入りが遅くなったとはいえ、仕事終わりはもう薄暗い。職員駐車場の出入口の邪魔にならないところで、佐々木先生を待った。

脇に植えられている桜の木には蕾が付きかけている。もうあと何週間かしたら桜が咲くだろう。桜が咲いたら先生とお花見がしたい。佐々木先生と桜、絶対に似合う。やばい、妄想捗る。

「心和、お待たせ」

「いえ、お疲れ様です」

「ニコニコしてるけど、何かいいことあった?」

「もうすぐ桜が咲くかなって想像してたのと、仕事終わりに先生に会えたからニコニコです」

本当はお花見の妄想とかもして、脳内の佐々木先生と戯れていたけど。そこは秘密にしておこう。

「じゃあ車乗って。ご飯食べに行こう?」

「えっ! いいんですか?」

「ほら、ずいぶん前にご飯行こうって、行けなかっただろ?」

「わー、嬉しい! 嬉しすぎて死んじゃうかも!」

「そこは生きててくれないと困るなぁ」

佐々木先生は眉を下げて困ったように笑った。

助手席に乗り込むと、やっぱり優越感に酔いしれる。ゆっくりと走り出した車は、先生の優しさを表すかのような優しく丁寧な走り。チラリと先生を見ると、暗くてもわかる端整な顔立ち。ああ、先生の隣にいられるって、なんて幸せなことなんだろう。

「またこっち見てない?」

「気のせいじゃないですか?」

佐々木先生がふっとこちらを見るので、さっと目をそらした。

「見てたじゃん」

「お構いなく。運転に集中してください」

「はいはい」

クスクス笑いながら、先生は前を見て運転をする。そして私はまた先生の方を向く。だって、運転している先生の姿がかっこいいから、ずっと見ていたいんだもの。

「あのね、心和サン。あまり見られると緊張します」

「えっ、先生がですか?」

「そうだよ。ドキドキするからちょっと我慢して」

心なしか先生が照れたような表情をする。そんなこと今までなかったから、驚いた。やばい、どうしよう。期待が高まってしまうのだけど。先生の気持ちに勘違いしてしまいそう。

「……私、先生のことドキドキさせたいです」

私が先生にドキドキするみたいに。
先生も私にドキドキしてほしい。
そう思ったのに――