「実はね、心和ちゃんが入る前に佐々木先生を好きになった看護師がいてさ、もーその子が仕事中も佐々木先生にべったりで大変だったのよ。佐々木先生も優しいからさ、その子調子に乗っちゃって仕事をおそろかにしちゃったわけ」
「ええ……」
「当然、私たちだって良い気はしないわよね。私が入る前からそういう状態だったらしくて、最終的に看護師長がキレて、佐々木先生にも断られて辞めてっちゃったけどね」
「あっ、だから私が入職したときに先輩たちがこぞって注意してきたんですね。佐々木先生の優しさに騙されたり絆されたりしちゃダメって」
「そういうこと」
千里さんは苦々しい顔をしながら深いため息を吐いた。
そんなことがあったなんて全然知らなかった。それなのに、新年会で佐々木先生に告白しちゃって、さぞかし先輩たちの度肝を抜いたことだろう。事情を知らなかったとはいえ、今更になってちょっと反省だ。
「でもね、心和ちゃんは違うじゃない。ちゃんと公私を切り分けてる。だから私たちも応援したくなっちゃうんだよね」
「応援してくれてるんですか?」
「もちろん。こんなこと言っちゃなんだけど、結局佐々木先生が好きになる人ってどんな人だろうって、興味がある。それが心和ちゃんだったらいいなって思ってるよ。その迷惑看護師の捨て台詞、教えてあげようか?」
「捨て台詞?」
「佐々木先生って優しいだけですよね、つまらないですって。負け惜しみだと思うけど」
あの剣幕はすごかった、と千里さんが思い出しながら苦笑いした。こんなに先輩の心に刻まれちゃうくらい爪痕を残した看護師を、私は実際に見てもいないけれど、無性に腹が立って仕方がない。だってそれって結局のところ、佐々木先生の心にも傷をつけているからだ。
そういえば思い出されることがある。先生が私に「俺のどこが好き」か聞いてきたときだ。
『優しさだけじゃつまらないらしいよ』
確かに先生はそうやって言っていた。それってきっと、その看護師の言葉が忘れられないってことじゃないだろうか。自虐的に言うくらいに。
「ええ……」
「当然、私たちだって良い気はしないわよね。私が入る前からそういう状態だったらしくて、最終的に看護師長がキレて、佐々木先生にも断られて辞めてっちゃったけどね」
「あっ、だから私が入職したときに先輩たちがこぞって注意してきたんですね。佐々木先生の優しさに騙されたり絆されたりしちゃダメって」
「そういうこと」
千里さんは苦々しい顔をしながら深いため息を吐いた。
そんなことがあったなんて全然知らなかった。それなのに、新年会で佐々木先生に告白しちゃって、さぞかし先輩たちの度肝を抜いたことだろう。事情を知らなかったとはいえ、今更になってちょっと反省だ。
「でもね、心和ちゃんは違うじゃない。ちゃんと公私を切り分けてる。だから私たちも応援したくなっちゃうんだよね」
「応援してくれてるんですか?」
「もちろん。こんなこと言っちゃなんだけど、結局佐々木先生が好きになる人ってどんな人だろうって、興味がある。それが心和ちゃんだったらいいなって思ってるよ。その迷惑看護師の捨て台詞、教えてあげようか?」
「捨て台詞?」
「佐々木先生って優しいだけですよね、つまらないですって。負け惜しみだと思うけど」
あの剣幕はすごかった、と千里さんが思い出しながら苦笑いした。こんなに先輩の心に刻まれちゃうくらい爪痕を残した看護師を、私は実際に見てもいないけれど、無性に腹が立って仕方がない。だってそれって結局のところ、佐々木先生の心にも傷をつけているからだ。
そういえば思い出されることがある。先生が私に「俺のどこが好き」か聞いてきたときだ。
『優しさだけじゃつまらないらしいよ』
確かに先生はそうやって言っていた。それってきっと、その看護師の言葉が忘れられないってことじゃないだろうか。自虐的に言うくらいに。



