癒やしの小児科医と秘密の契約

「優しさはさ、作ろうと思えば作れるけど、それを継続するのは難しいと思うよ。だからずっと優しい佐々木先生は、本当に優しいんだと思う。だけど人間だもの。優しさだけでできてるわけないじゃん。それをわかってるのは、心和ちゃんでしょ? 心和ちゃんが一番近くで佐々木先生を見てるんだから」

「そうそう、誰よりも佐々木先生のこと見てるもんね」

「もしかしてもう、好きじゃなくなった?」

「え…………」

最近の私は、あの日の佐々木先生のことばかり考えていた。どうして先生は泣かないんだろう。どうして笑顔を振りまけるんだろう。どうしてあんなにも平気な顔をしていられるんだろう。

だけど急に、走馬灯のようによみがえる佐々木先生との日々。内緒でお菓子をくれたり、対症療法を考えてくれたり、心和って笑いかけてくれたり。そのどれもが真実で、とても愛おしいものだったのに。

どうしてそれを忘れちゃってたんだろう。

「それにさ、こんなに悩めるってことは、心和ちゃんが相手のことを想って寄り添ってるってことだよね。それだけ心和ちゃんが優しいんだよ」

杏子さんの言葉が胸に響く。私が悩んでいることが無駄じゃないんだ、良いことなんだって、肯定されているみたい。胸が熱くなって、モヤモヤしていたものが優しく解放されていく。目の前が開けていく。

「なるほど、釈迦は心和ちゃんだった説」

「釈迦心和」

「みなさん、ありがとうございま――」

「あっ、そういえば清島先生に聞いたんだけど、佐々木先生と手を繋いで歩いてたって?」

「「「えっ?!」」」

杏子さんの言葉にドキンと心臓が跳ねる。さっきまでの感動があっという間に吹き飛んでいった。

「ど、どこで?」

「病院の出入口? 一緒に帰ったのかなって言ってたけど」

病院の出入口で手を繋いだって……あれだ、ニャンココラボカフェ行きませんかって誘ったときだ。まさか清島先生に見られていたなんて。嘘でしょ。