癒やしの小児科医と秘密の契約

「さっきも言ったんですけど……、患者さんが亡くなって、佐々木先生泣かなかったんです。その子は、私とは比じゃないくらいに佐々木先生が好きで、先生もすっごく気にかけてて。お見送りのあと、すぐに他の子どもたちに笑顔を振りまいてて、何かその姿がショックで……」

「あー、担当してたんだから、もっと情とかあるだろって感じ?」

「そうです。そんな割り切れるほどの関係だったのかって思って。佐々木先生の優しさが全部作り物に見えちゃって……」

佐々木先生の半分は優しさでできていると思ってるから。だからこそ、そこに先生の優しさが見えなかった。優しい先生なら、ナオくんを偲んで泣いたり悲しんだりすると思ったのだ。

「それは心和ちゃんの理想だよね?」

桜子さんが、いつの間に頼んだのか、デザートのバニラソフト(カップ)を食べながら、首を傾げる。

「え? 理想?」

私も同じく首を傾げた。

「佐々木先生だったらきっとこうするって、思ったんでしょ。だからショックを受けたんだよ。だって私は佐々木先生にそんな理想持ってないから、泣かなくても何とも思わないよ」

ソフトクリームをスプーンですくって、はいっと差し出される。キョトンとしたら口にスプーンを突っ込まれた。ひんやりとした甘さが口いっぱいに広がる。

「うーん、私も佐々木先生は優しいとは思うけど、先生の態度にショックは受けないなー。むしろちょっと立派だと思った。それだけ仕事に打ち込めるってなかなかないよ。感情的には泣いてほしいと思うけどね。佐々木先生はそういう姿が似合うっていうか」

千里さんが、「私にもくださいよー」と口を開ける。桜子さんは餌付けをするかのように千里さんの口にもバニラソフトを突っ込んだ。

「ま、私たちの意見なんて所詮にわかなので。心和ちゃんがそう思うなら、そうなんだろうね」

「というわけで、はい、杏子さん、締めちゃってください」

「ええっ、私が大トリ?!」

指名された杏子さんは、腕組みしながらうーんうーんと唸る。そしてピッと人差し指を立てた。