癒やしの小児科医と秘密の契約

「あ、心和ちゃん笑った」

「え?」

「よーし、もっと笑え笑え~」

お皿にどんどんお肉が盛られる。
まだ飲み切ってないのにビールのおかわりまできた。

「えっ、えっ?」

「今日はね、心和ちゃんを励ます会だから」

「最近元気なかったんでしょう?」

「食べて笑って、話して発散。はい、かんぱーい」

ジョッキを掲げる三人につられて、私もジョッキを持ち上げた。カツンと軽快な音がする。ビールが波打ち、少しだけこぼれた。

「なんですか、皆さん。優しすぎませんか?」

「え、知らなかった? 私たち、優しいのよ」

「釈迦佐々木並みにね~」

「ま、計画してくれたのは千里ちゃんだけどね」

「ち、千里さん~」

「心和ちゃんの先輩ですから」

「ふわぁ~好きですぅ~」

「おいおい、好きの安売りするな~。佐々木先生に言いなさいよ」

千里さんも、杏子さんも桜子さんも、ニコニコと笑ってくれる。私のことを気づかった、優しい笑み。ずっと冷えていた心が、湯たんぽのようなぬくもりで温められていく。

「話、聞いてくれるんですか?」

「もちろん」

「そのための女子会でしょ」

「お姉さまたちに洗いざらいしゃべっちゃいなさいよ」

「ふわぁ~、お姉さまぁ」

鼻の奥がツンとして、目尻に涙がたまっていく。こぼれそうになったところを千里さんに「肉を食べろ肉を」と口にお肉を突っ込まれて、涙が引っ込んだ。とんでもなく手荒い……でも、嬉しい。

「患者さん、看取ったんですって?」

「はい。大泣きしちゃって、迷惑をかけてしまいました。それで、何と言うか、医療従事者として、どうあるべきかよくわからなくなっちゃって」

「看取りが初めてだったの?」

「いえ、初めてではないんですけど……」

「患者さんが心和ちゃんのこと慕ってたんですよ。だから通常より情が深かったというか」

「なるほどね~」

「それはつらかったね」

杏子さんがまた私のお皿に焼けたお肉を追加した。食べて元気を出せということらしい。