癒やしの小児科医と秘密の契約

どうしたら佐々木先生に好きになってもらえるか、考えてはいるけれどいい案は浮かばない。ちょっとは仲良くなれている気がするけれど、ただの自己満足のような気もする。

「うーん」

「何か悩み事?」

「めちゃくちゃ悩んでいます」

「話聞く?」

「いえ、今言うと契約違反になるので言いません」

先生に好きって言いたいし、どうしたら好きになってもらえるかも聞きたい。でもそれは今じゃない。今口にしたら確実に叱られるやつだからだ。それも本気モードで。

「ぐぬぬ……」

「じゃあ、今日仕事終わったらご飯でも行く?」

「…………えっ?!」

一瞬言葉が理解できなかった。頭の中をぐるぐる回ってから、ようやく事の重大さに気づく。まさか佐々木先生から誘ってくれるなんて。

「い、行きたい行きたい、行きたいです!」

「ははっ、嬉しそう」

「当たり前じゃないですか。嬉しくないわけないですよ。もー、午後からの仕事も頑張れます!」

「そうだね、俺も」

ニコッと微笑んでくれる佐々木先生が尊すぎて、また今日もズギューンと心臓を撃ち抜かれた。ああ、もう、どれだけ先生のことを好きになれば気が済むんだろう。

先生のおかげでモチベーションアップした私は、午後からの仕事も張り切ってこなしていった。仕事が終わればご褒美タイムが待っている。

「ちょっともー、顔ニヤけすぎ」

千里さんが笑いながらからかってくる。佐々木先生と食事をする約束をしたと千里さんに伝えたら、ガシガシと肘で突っつかれた。

「だって、楽しみすぎて勝手にニヤけちゃいます」

「心和ちゃん見てるだけで幸せな気持ちになるわ」

「えへへ」

「くっそー。恋する乙女か」

散々からかわれながらも、ドキドキわくわく夜を楽しみにしていたのだけど――。

定時間際に、内線電話がスタッフステーションに鳴り響いた。それは時間外診療をしている救急外来からで、佐々木先生が呼び出されていった。結局そのせいで先生とご飯に行くことはできなくなってしまった。

わかってる。そういう事がある仕事なんだって、理解している。だからそれほどショックではなかった。

けれどそれよりも、心配事で頭がいっぱいになった。なぜならその救急外来を受診したのは、一時退院していたナオくんだったからだ。