癒やしの小児科医と秘密の契約

「先生、それはあえて言わないでください。動じてます。本当に、ドキドキしすぎて心臓が痛いです」

「外科、紹介しようか」

「そういうことじゃないんですよ」

「あはは、違ったか」

ニコニコっと笑うその笑顔も素敵すぎて、直視できない。意識し始めるとあれもこれも気になって、アドレナリンが大放出されるみたいだ。出血大サービス状態になった私のアドレナリン、ちょっと戻ってほしい。勝手に特売にされるのは困る。

「私、先生のことが好きだから、今ここで二人っきりでいることも、もう心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしててですね」

「そうなの?」

「そうですよ。先生は私のことなんとも思っていないかもですけど、私は先生と一緒の時間を過ごすことがとても嬉しいし、私だって先生のことをドキドキさせたいです。理想のデートプランだってありますから!」

「へえ。知りたいな、理想のデートプラン」

「えっと、朝はお迎えに来てもらって、一緒にお出かけして手をつないで……って、何で言わなくちゃいけないんですか」

勢いとはいえ自分で言っておきながら、恥ずかしすぎてどんどん顔が熱くなる。思わず両手で頬を押さえた。恥ずかしいのに先生への気持ちが溢れてきてしまって、収拾がつかない。

「……私のことを好きになってもらえるように必死なのに、私の方がもっともっと先生のこと好きになってる」

「……俺だって別にドキドキしてないわけじゃないよ」

「え、ほんとに?」

ぱっと顔を上げる。バチッと視線が交わると佐々木先生はくすっと笑って首を傾げた。

「うん、心和が次は何をやらかすのか、ドキドキしてる。午前中、なんか謝ってたよね? 体温計置き忘れだっけ?」

「はっ! 先生、見てたんですか?」

「今日も頑張ってるなあって」

「もー恥ずかしい。……って、そういうドキドキじゃないんですよ!」

「そっかー。あはは!」

からかわれるのが悔しいのに嬉しい。佐々木先生とこんな風にお喋りできるようになっただけ、少し前に進んでるって思ってもいいだろうか。