癒やしの小児科医と秘密の契約

「……先生、ナオくんは?」

「大丈夫、落ち着いたよ」

「そうですか」

ほっと胸を撫で下ろす。と同時にまた情けなさが込み上げてきて、鼻の奥がツンとした。そんな気持ちをごまかすように、ニコッと笑う。

「やっぱり先生はすごいです」

「すごくないよ。ナオくん俺のことめちゃくちゃ殴ってきてさ、全部受け止めたから今腹筋が痛い。親御さんには土下座する勢いで謝られるし。もー大変だったよ」

大変とか言いながら、そんな雰囲気を少しも感じさせずに佐々木先生は穏やかに笑った。

「ナオくん、納得してくれたんですか?」

「いや、全然。でもナオくんが嫌がる治療法は避けたいよね。こっちはこれが最善策だって考えて治療に当たるけど、それが本人にとって苦痛だったら治療でもなんでもないよ」

「確かに、そうですね」

「とりあえず、来週の一時退院を目指そうって約束してきた。だから、心和もナオくんといっぱいお話して。今ナオくんに何が必要なのか、一緒に考えていこう」

ぽんっと頭を撫でられる。

インシデントを起こしてしまったし、ナオくんにも拒絶され、私はもうナオくんと関わらない方がいいのかと思っていた。

でもそうじゃない。

私はまたナオくんのお世話をしていいんだ。今日の反省を踏まえて、もっとナオくんの気持ちに寄り添っていけばいいんだ。

そういうことを、佐々木先生が教えてくれている。先生の温かさに、胸が熱くなって苦しくなる。ポロッと一粒、涙がこぼれた。

「そうだ、採血結果は大丈夫だった? どんな些細なことでも、報告しないといけないよ。ここは命を扱う現場だ。それは患者だけじゃない、自分たちの命も等しく同等ということだよ。心和なら、わかってるよね」

「……ううっ……はい……ふえっ」

佐々木先生の言葉が体に沁み入ってくる。ずっと堰き止められていたダムが決壊するように、溢れる涙が止められなくなった。