肉まんも食べ終わって、車が走り出した。佐々木先生の運転する車の助手席に座れることは、優越感があっていい。

ここに私以外の人を乗せないでほしい。なんて嫉妬に燃え狂いそうな気持ちになるけれど、先生は優しいから誰でも乗せちゃいそうだ。

ちらりと横顔を拝む。
かっこいい。ずっと見ていたい。

「……なんかずっと見られている気がする」

「どうぞお構いなく」

こっそり見ていたはずだったのに、早速バレてしまった。だって佐々木先生がかっこいいんだもの。見るなと言われても見てしまうのは、仕方がないことだと思う。

信号が赤になって車が停車した。佐々木先生がこちらを見る。じっと見つめられて耐えられなくなって、ふいっと目を逸らした。

「何で逸らすの」

「だって先生が見てくるから」

「俺のことは見てたくせに」

「わ、私はいいんですよぅ。ほ、ほら青になりましたよ。前見てください」

また、車が動き出した。
先生はちゃんと前を向いて運転する。

ドキドキと鼓動が速くなる。私は見つめられただけでこんなにもドキドキしているのに、先生はいつも通り穏やかな顔をしている。

ズキンと胸が痛んだ。
一方通行の想い。私の想いが通じる日は来るのだろうか。お試しで付き合うことになったけれど、いつか「もういいや」って終わりを告げられることがあるかもしれない。先生に飽きられる日が来るかもしれない。

「……先生に好きになってもらいたい」

ぼそっと呟く。先生はちらりとこちらに視線を送って「何?」と首を傾げた。聞こえていなかったことに安堵する。

「ううん。先生疲れてるのに送ってくださってありがとうございます。ゆっくり休んでください」

「こちらこそ、肉まんありがとう」

手を振って、別れる。
対症療法のキスはなかった。
それがとてももどかしくて歯痒い気持ちになったけれど、同時に自分の欲張りさに嫌気が差した。