癒やしの小児科医と秘密の契約

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

「車で食べようか。帰り送ってくよ」

病院の向かい側にある職員駐車場に向かう。先生の車にお邪魔して、お茶と肉まんを渡す。肉まんはまだホカホカで、美味しそうな香りが車の中に充満する。

「ありがとう、いただきます」

「はい! いただきまーす」

しっかり仕事をしたからめちゃくちゃお腹がすいていた。すきっ腹に染みわたっていく肉まんのジューシーさ、最高。

「あはは」

「はい?」

「ごめんごめん。美味しそうに食べるなーって思って」

あまりにも大口を開けすぎていただろうか。見れば佐々木先生よりも先に食べ終わっている。ちょっと恥ずかしいかも。

「いっぱい働いたのでいっぱい食べます。先生もいっぱい食べないと、元気出ませんよ。小児科はこっちが元気じゃないと子供たちに負けちゃいますからね」

「確かにそうだね。川島さんの人気の秘訣は食にあったか」

「人気?」

「子どもたちに人気でしょ」

さも当然かのように言うので、ポカンとしてしまう。子どもたちに人気だなんて、初めて言われたからだ。

「それを言うなら佐々木先生が一番人気ですよ。子どもにも親御さんにも大人気で、信頼が厚いですもん。ほんと尊敬します」

「そんな褒められたものじゃないよ。俺はいつも必死だからね。今日も必死だった」

「私だっていつも必死です。佐々木先生に追いつきたいですもん」

「俺に追いつく?」

「あ、頭では追いつけないので、なんていうか、人当たり的な面で先生みたいになりたいです」

私だって患者さんの気持ちに寄り添える、立派な看護師になりたい。釈迦川島って言われるくらいに、優しさと慈悲深さを備えたい。後光を携えたい。

「それだったらもう十分でしょ? みんなここちゃんって呼んでる。俺なんてずっと、先生だよ」

「そりゃ先生は先生でしょ。何て呼ばれたいんですか?」

佐々木先生は、うーんと腕組みをして考える。散々うんうん唸ったのち、「ま、先生でいっか」と笑った。