癒やしの小児科医と秘密の契約

「お、お疲れ様です!」

『……お疲れ様』

元気よく電話に出ると、少しだけ間があいて電話特有の少しくぐもった声が耳に届く。耳にダイレクトに伝わる佐々木先生の声、なんという至福。

「どうかされましたか?」

『……マシュマロ、ありがとう。元気出た』

先生が気づいてくれてたことに、胸がいっぱいになる。なんて単純な私。夜勤明けの疲れなんて一瞬で吹き飛んでいってしまう。

「先生、もしかしてお礼を言うために電話してくれたんですか?」

『そうだね。でも、……川島さんの声が聞きたかったから』

「えっ! うええっ!」

まさかそんなことを言われると思ってもみなかったから、動揺して変な声が出てしまう。電話の向こうで先生がくすくす笑う声が聞こえた。

『川島さんの明るい声を聞いていると、元気が出るんだよね』

「嬉しいです。これからも賑やかしていきます」

『賑やかしって、あはは』

笑ってくれた先生の声が少し弱々しくて、違和感を覚える。電話だからそう聞こえるのだろうか。それとも当直明けだから?

「先生、何かありました?」

『いや、お腹すいたなーって』

「お仕事終わりましたか? よかったら肉まん食べませんか?」

目の前で揺れる幟を見ながら、気づいたら誘っていた。肉まん食べようだなんて、まるで食いしん坊な私を主張しているみたいだったけど、先生はあっさりと了承してくれた。

コンビニで肉まんを二つと、一緒にお茶のペットボトルも買って、病院へ逆戻りだ。仕事が終わったあとに佐々木先生と会えるなんて、何という幸せ。今日一日頑張ったご褒美だろうか。

ウキウキな足取りで戻ると、病院の出入口で先生が待っていてくれた。朝日に照らされてまばゆい。当直明けだと言うのにこの清々しさ。あまりの神々しさに拝みたくすらなる。