休み明け出勤早々、先輩の千里さんに休憩室に連れ込まれた。

「佐々木先生とデートしたんでしょ? どうだったのよ?」

「ニャンココラボカフェ、最高でしたよ。私はニャンコグラタン食べたんですけど、ぷりっぷりのエビが入ってて――」

「いやいや、聞きたいところそこじゃないわ」

「えっ? あ、佐々木先生は、ニャンコハンバーグ食べてました。お子様ランチみたいにニャンコの旗が刺してあって、めっちゃ可愛くて――」

「食べ物とか、どうでもいいのよ。仲は進展したの?」

「うっ……。げ、現状維持でございます」

「現状維持ねぇ。デートしたらちょっとは仲が深まるかと期待してたのに」

「あ、はは……頑張りますぅ」

ニヤニヤからかってくる千里さんと一緒になって笑ってみたものの、実は千里さんに言えないことがある。

あの日も帰り際、先生とキスをした。
でも、私からせがんだのだ。

『今日は対症療法してくれないんですか?』

ニコッと笑って優しく口づけてくれた。
それ自体はとても嬉しくてドキドキして、もう死んじゃうかもってくらい気持ちが高ぶったけれど、時間が経つにつれ不安が押し寄せてくるのだ。

佐々木先生は慈悲で私と付き合ってくれているんじゃないか。
優しいから願いを聞いてくれているんじゃないか。

私だけが好きだ好きだと騒いでいる。まだまだ一方通行の恋。佐々木先生が振り向いてくれる日は来るのだろうか。

「うわーん」

「どっ、どした? 気でも触れた?」

「ちょっと、佐々木先生の顔見て落ち着いてきます!」

「それ、余計に落ち着かないんじゃ……まあいいか」

休憩室を出てスタッフステーションに戻ると、そこに佐々木先生の姿はない。どこに行ったのだろうと奥の部屋を覗くと、デスクに向かって何やら作業中の先生がいた。