癒やしの小児科医と秘密の契約

「私、絵下手なんだよ〜」

「えー、そうなの? じゃあ小谷さんは?」

「私もそんなに上手くないけど……」

と言いつつ、莉々花ちゃんは手際よくスケッチブックにさらさらとピュアリンピンクを描いた。お手本となる資料もないのに、髪飾りやチョーカーの細かい柄まで完璧だ。

「り、莉々花ちゃん、あなたもしかして……」

「小谷さんガチオタ?」

「えっ?」

「「ピュアリン仲間だー!」」

千奈ちゃんと私の声がハモる。
ピュアリン好きに悪い人はいない。私の中で莉々花ちゃんへの仲間意識が急に高まった。

「すごーい、すごーい! ピュアリンブルーも描いてー!」

「うん、いいよ」

「本物の画伯現る」

「何言ってるんですか、川島さん。小児科勤務ですもん、イラストくらい描けなくちゃ」

ガーン!
イラストくらい……イラストくらいって……!
先輩としてのプライドが今めちゃくちゃに崩れ去った気が……。いやいや、気を確かに持つのよ、私。

「そ、そっちの分野は莉々花ちゃんに任せた……」

「へー、川島さんでも苦手なものがあるんですね。意外な弱点発見しちゃったぁ」

「ぐっ、弱点……。私は他で頑張りますので……。そ、それはそうと、莉々花ちゃんめちゃくちゃ上手いじゃん。今度スケブ持ってくるから、私にも描いて、ピュアリン」

「いいですけど……川島さんマジでガチオタですか?」

「小谷さん、ここちゃんはねー、ピュアリンカフェに行ったんだってー」

「ガチだ……」

「私も退院したら行きたーい」

「よーし、早く退院できるように治療頑張ろうね」

「はーい」

ピュアリンのおかげで、千奈ちゃんと莉々花ちゃんは打ち解けて仲良くなれたみたいだ。千奈ちゃんはもうすぐ大きな手術が控えている。少しナーバスになることもあるけれど、好きなことで笑って楽しく過ごしてほしいと思う。

「それにしても、川島さんがガチオタとは……」

「うるさいなぁ。ちなみにそのピュアリンカフェは佐々木先生と行きました」

「なっ……!」

「ふふん」

莉々花ちゃんがガチオタのことをニヤニヤとからかってくるので、思わず対抗意識を燃やしてしまった。本気で悔しがる莉々花ちゃんを見て、優越感がわきあがる。

……ほんと、大人げないなぁ、私。