黒百合の女帝

 「さあー?三階のホスクラで働いてる人じゃない?」

 「じゃあ、なんでホストが私たち目掛けて歩いてきてるの?」

 「えー、知らな〜い。あ、こんばんは〜」

目前まで迫る男に対し、ハラが会釈をする。

すると男は私たちを交互に見遣り、口を開ける。

 「あの、もしかしてユリさんとハラくんですか?」

確信ではない、という口振りだ。

もしや、ヤナギから勧誘された人だろうか。

 「えっと……あなたは?」

 「俺はヤナギさんの友人のカヤと言います。彼から麓冬を紹介されたのですが……」

カヤと名乗る青年が、ヤナギの名を出す。

思った通りが、まだ半信半疑な所。

新人を装った敵の可能性がまだ残っている。

愛想は作らず、自然体の態度で接する。

 「そうでしたか。ヤナギさんはどこに?」

 「一足先に来てるみたいですよ」

私たちが知らされている情報と同じ……。

少しは信憑性も増したな。

と考えていれば、ハラがスマホを近づけて来る。

画面には、メッセージアプリの会話履歴が。

 『話し掛けられた〜この人で合ってる?』

 『僕が呼んだので合ってるよ。そのままビルに入って』

 『りょうか〜い。ありがとねん』

という一連の会話が記されていた。

ヤナギはここが見える位置にいるのか。

試しにビルを見上げてみるが、彼は見当たらない。