黒百合の女帝

 一週間前の土曜日、午後10時の歓楽街。

雑居ビルの手前で、スマホと物件を見比べる。

ヤナギから送られてきた情報と全て一致。

ビルの最上階には、キャバクラが入っていた。

眩しい看板の群れを見上げ、ハラに話し掛ける。

 「七階の店知ってる?」

 「知ってる知ってる。俺のダチが働いてるから」

 「そう。ところで、あそこの男は知り合い?」

遠くで私たちを凝視する、若い男を一瞥する。


 ぱっと見20代前半。大学生だろうか。

端正な顔立ちに、細長い手足。

白く染めたであろう、胸元まである長髪。

それを低い位置で結んでいるのが特徴的。

格好は白の開襟シャツに黒いスラックス……

そのような人物は、私の記憶上存在しない。

となれば、ハラの知人か何かだろうか。

と思ったのだが、どうやら彼も知らないようだ。

首を傾げ、眉根を寄せている。