黒百合の女帝

 ユリさんの言うことはもっともだ。

しかしここで逃げるのは、絶対に違う。

考えうる二択で、頭を悩ませていた時。

突然、前方から駆けてくる様な足音が。

警察かと思い、更に頭が混乱する。

が、街灯に照らされたのは、見慣れた姿。

 「トシアキ!すまんが、手伝ってくれないか?」

 「あ、総長こんばんは〜。ユリも元気?」

 「はい。お蔭様で。」

 「そっかそっかあ。というかなにこの老害。うっさいんだけど」

 「例の変質者だ。俺の代わりに抑え込んでくれないか」

 「りょーかい。ってかこのあと警察来るんでしょ?総長逃げなよ」

さりげなく図星を突かれ、視線を逸らす。

彼に押さえつけられた犯人は、未だに妄想を叫んでいた。

思い悩んでいる頭に、その妄言は酷く響く。

 「いや、俺にはユリさんを守りきるという使命があってだな」

 「え、じゃあ総長、四代分の嶺春の歴史をパーにするってこと?」

 「そうですよ。ユウヒさんは逃げて下さい。警察来ちゃいますよ。」

主張した挙句、正論リンチに遭ってしまった。