黒百合の女帝

 「ここは住宅街なので、多分他にも通報は入っているかと。」

 「ああ、なら尚のこと安心だな。すぐに警察が来てくれるだろう」

 「しかしそれだと、ユウヒさんは別件で捕まってしまうのでは……?」

 「あっ……。確かに……」

彼女の指摘に、最大の見落としを見つける。

別件、というのは俺が総長である件だろう。

嶺春は暴走族の中で、一際大きい集団だ。

そこの総長は当然、目をつけられてるわけで。

そして俺が捕まれば、最悪嶺春は解散。

 「どうしましょうか。でも俺が逃げると、こいつが野放しに……」

冷や汗を垂らし、ユリさんを見上げる。

すると彼女は包丁を握り締め、精悍な顔つきに。

 「トシアキ君が来るまで待ちましょう。それからユウヒさんが逃げるなら、間に合う筈です。」

 「それでも、ユリさんの身が危険ですし……」

 「いえ、ユウヒさんは命の恩人です。なのに私の所為で捕まるなんて、あってはなりません。」

真剣な声音に、なんと返せばよいのか迷う。