黒百合の女帝

 ずっと、疑問に思っていたのだ。

なぜ彼女は、親や警察を頼らないのか。

それは、彼女の自信のなさにあったのだろう。

二度目の被害に、ご両親はひどく心配する。

出張中だろうが、彼女の元へ必ず駆けつける。

でももし、ストーカー被害が勘違いだったら?

両親を心配させた挙句、仕事の邪魔をした事に。

警察も同様に、誤解を恐れているのだろう。

疑心暗鬼になった故に起きた勘違いだった。

そんな顛末を、彼女は最も恐れている。


 そんな中、嶺春を頼ってくれたんだ。

彼女なりに悩んだ結果、選んでもらったんだ。

少しでも、そんな彼女の頼りになりたい。

それに、俺は彼女の依頼を引き受けた身。

護衛として、彼女だけは守らなければ。

 「俺の務めはあなたの不安を和らげる事です。だから、俺は迷惑じゃありません」

 「いえ、私が依頼したのは私の身を守ることで……でもそれは意味がなくて。」

 「いいえ。あなたは自分で自分を傷つけている。ならば、その傷つける要因をなくすことが俺の任務です」