黒百合の女帝

 「実は私、数年前にもストーカーに遭っていたんです。」

突然のカミングアウトに、目を見開く。

そんな話、今まで聞いたことがなかった。

彼女は前髪を垂らし、細々と言葉を紡ぐ。

 「その時はなんとかなったんですが、それ以来、少し外が怖くなっちゃって。」

鞄を強く握り締め、声を絞り出す。

そんな彼女が、突然哀れな少女に見えた。

 「だから、今回はただの思い過ごしなのかなって。」

 「でも、あの手紙は偶然なんかじゃ投函されませんよ」

 「だとしても、ストーカーはストーキングをとうの昔に辞めてて、なのにそれ以降も私が過敏に反応して、ストーカーの仕業だって決め付けてた可能性だって」

 「ユリさんっ!」

捲し立てる彼女を制止するように、名前を呼ぶ。

すると彼女は顔を上げ、揺れる瞳を見せた。

呼吸が乱れている彼女は、ひどく動揺していた。

そんな彼女を宥めるため、手を握る。

 「自分を責めないで下さい。もし思い過ごしだったとしても、俺は迷惑なんかじゃありません」

彼女透き通った瞳に、優しく語りかける。