黒百合の女帝

 ユリさんの護衛を始め、早三日目。

午後5時を過ぎた頃、彼女の元へ向かう。

すると校門の前に、いつも通り彼女が居た。

 「あ、ユウヒさん。学校、お疲れ様です。」

 「俺は屋上でサボってただけですが……ユリさんの方は?」

 「今日も楽しかったですよ。じゃあ、行きましょうか。」

それに軽く頷き、夕日の方向へ歩き出す。


 ここ二日と今朝の計五回。

その間、一度もストーカーとの遭遇はなし。

いい事なのだが、流石に不穏な気もする。

嵐の前の静けさ、という言葉が脳裏をよぎる。

ユリさんも、こんなことは初めてだと言うし……

 「今晩も、何事もなければいいんですが……」

 「ええ。私も少し不安です。」

そう言うと、彼女は申し訳なさそうに俯く。

 「わざわざ時間を割いて頂いているのに……すみません。」

 「いやいや、平穏な方がいいですよ」

 「でも、もしかしたらストーカーなんて居なくて、ただ私が過剰になっていただけかもって。」

彼女はか細い声でそう呟き、歩みを止める。

俺もそれに倣い、その場で立ち止まる。

なんだか、彼女の様子がおかしい。

今の彼女は顔を俯かせ、足元ばかりを見ていた。