黒百合の女帝

 という訳で、大人しく化粧台に座る羽目に。

俺が椅子に着けば、男は目を爛々と輝かせる。

 「ガチでさんきゅ!じゃ髪セットするから、頭動かさないでね〜」

そう話す彼の頭を、鏡越しに確認する。

……まさか、橙色に染髪とかはないよな。

やや不安になりながら、彼を無視し続け10分。

 「できた!無造作外ハネマッシュ&ポンパドール!超傑作!」

騒がしい雑音に、閉じていた瞼を開ける。

鏡には、前髪を上に留めた俺がいた。

後頭部もいつにも増してバラバラしている。

にしても、この男マジで不快感の化身だな。

いい加減殴ってやろうかと思った、丁度その時。


 扉が静かに開かれ、ユリが姿を現す。

彼女の両手は、マグカップで塞っていた。

 「ごめん待たせちゃって……なんかお洒落になったね?」

そう言われた途端、羞恥心が湧き上がってくる。

変な姿を、彼女に見られてしまった。

至って平静を演じるが、思わず俯いてしまう。

しかしそんな姿を、彼女は笑って受け入れる。