黒百合の女帝

 という言い合いを眺めていれば、遠くから咳払いが一つ。

視線を移せば、そこには無表情の副総長が。

彼は私を一瞥した後、穏やかに敵意を剝きだす。

 「僕としては、ユリさんを嶺春から除名することを推薦します。」

彼がそう提案した途端、全員の挙動が一斉に止まった。


 (ミヤビ)。嶺春の副総長で頭脳派。

落ち着いた茶髪に、細身の高身長。

優雅な佇まいと紳士的な態度が評判の美青年。

というのは偽装であると、私は確信している。

時折滲み出る不快感に気付かぬほど、私の洞察力は甘くない。

そして、彼は私に嫌悪を抱いている。

だからこそ、機を見て今のような行動を起こした。

そこで気になるのは、サクラとの共謀。

彼女と裏で繋がっているのか、全くの無関係なのか。

いずれにせよ、このタイミングで実行するのは……

確実に、ヨウの便乗を狙っている。