黒百合の女帝

 「……僕、ユリちゃんが犯人だとは思わない」

そう断言した途端、その肩が強く弾かれた。

勢いによろめいたヤユが、後ろに踏鞴を踏む。

早速仲間割れか。それに相手は……

先ほど私の手を払った、あの(ヨウ)だ。


 ヨウ。喧嘩っ早い嶺春の幹部。

金髪……以外の特筆すべき点は特になし。

感情の起伏が激しい割に、根は真面目な人物。

では、そんな彼がなぜヤユを突っ撥ねたのか。

回答、彼はサクラに恋情を抱いているから。

勿論、これはただの推測でしかない。

が、彼の様子を見るに、これは事実だろう。

彼が感情的になる時は、大半がサクラ絡みだから。

 「お前、サクラを悪者扱いする気か!?」

 「いや、僕はサクラちゃんが悪いなんて思ってなくて……」

 「あの女の味方してる時点でサクラを否定してんだろ!」

 「でも、あの、僕はみんなが仲良くできたらって……ごめんなさい」

で、結局ヤユが根負け。