黒百合の女帝

 そう話しながら、黒崎は慣れた様子で処置を施していく。

 「右頬は水で洗ってからガーゼとか付けよっか。私は準備してるから、水道で洗ってきて。」

手際良く医療品を探す彼女を背に、水道へ向かう。

彼女に命令されている現状が気に食わない。

そんな不満を抱きながら、頬を水で洗う。

元の場所に戻ると、黒崎は準備万端な様子。

 「じゃあ手当てするから、前髪を持ち上げてくれない?」

遠慮気味な彼女への反発心が募る。

が、拒絶しても彼女は迫り続けるだろう。

素直に前髪を持ち上げ、急かす様に睨み付ける。

しかし彼女は動揺の一つもせず、黙々と作業を続けた。

 「……はい、完了。他に痛い所は?」

特にない。それを示すため、かぶりを振る。

すると黒崎は頷き、ポケットを漁り出した。

そしてチョコ菓子を取り出し、俺に差し出す。

それは、俺の好物だった。

 「屋上、チョコが沢山あったから。良かったらどうぞ。」

断る理由もないので、素直に受け取る。

毒は……こいつに限って入れてる訳ないか。

薄々、彼女に心を許し掛けている。

それを自覚しながら、菓子を仕舞う。

そして椅子から立ち上がり、扉の方へと向かう。

後ろからは休まなくても良いの?という問い掛けが。

それには返事をせず、振り向きもせず一言。

 「ありがと」