黒百合の女帝

 妖美な仕草に、思わず眉間に皺を寄せた。

 「自分で拭くつもりだったのに。そっちこそ堕とそうとしてんじゃない?」

 「ごめんごめん。別に誑かすのは趣味じゃないよ?」

不自然な程に口角を上げ、そう話すヤナギ。

軽く睨め付けるが、彼は気にせず手を拭いた。

 「さて、次はどこに行きたい?」

声音を明るくし、ヤナギが席から立ち上がる。

それに伴い、私も椅子から腰を上げた。

 「ゲーセンで遊ばない?私、行ったことなくて。」

 「ゲーセンかあ。高校生以来かも」

 「よし。なら行ってみようか。」

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 「ヤナギ弱くない?」

 「いや、ユリがコツ掴むの早すぎるだけだよ」

ゲームセンターに着き、早数分。

レースゲームにて、私は勝利を捥ぎ取っていた。

その隣では、敗者ヤナギが背に凭れている。

彼の横顔を見て、私は思わず目を見張った。

ヤナギが初めて、微笑を浮かべていたからだ。

彼にも喜びがあったのだな……と感慨深くなる。