黒百合の女帝

 「おまたせ致しました、ご注文の品です」

クレープ屋の受け取り口にて。

クレープを受け取り、ヤナギの元へ向かう。

テラス席に行くと、彼は既に食べ始めていた。

 「それ何味?」

 「マスカルポーネとピスタチオのクレープ」

 「ふうん。何口食べた?」

 「一口」

 「なら一口頂戴。」

首を傾げながら、上目遣いに強請ってみる。

するとヤナギは破顔し、クレープを差し出した。

それに微笑み返すが、腕は机の下から出さない。

代わりに顔を引き寄せ、クレープに齧り付いた。

姿勢を元に戻すと、彼の驚いた顔が視界に入る。

それを肩で笑いながら、クレープを飲み込んだ。

 「美味しいね。これにすれば良かったかも。」

 「そう?というかもしかしてだけど、僕を堕とそうとしてる?」

彼の自惚れに、不覚にも吹き出してしまう。

苺クレープを食べながら、その勘違いを正した。

 「今のはただ受け取るのが面倒だっただけだよ。」

 「なんだ。油断も隙も無いなあって思っちゃったよ」

クレープを食べると同時に、目を細めるヤナギ。

その作り笑いは、もはや見慣れたものだった。