黒百合の女帝

 彼女が屋上に来て早三日。

無視を決め込めば、どこかへ行くと思っていた。

が、まだ居る。

最初こそは興味もなかったが、もはや邪魔だ。

昼になる度ここへ来て、一人で喋り続ける。

本来の目的は、俺に授業を受けさせる事の筈。

しかし彼女が話すのは、進路ではなく雑談。

警戒心を解いてから授業に誘う作戦だろうか。

ならば、もう突き放した方が良いかもしれない。

お前のイメージアップの為に利用されてやるか。

きゅうりを噛み砕き、久々に口を開ける。

 「もう来んな。うざい」

たった二言吐き捨てれば、彼女の微笑は一瞬で萎れる。

 「そっか……うん、ごめんね。迷惑だった……よね。」

そして露骨に落ち込み、半分も残っている弁当に蓋をした。

 「じゃあね、棚橋君。楽しかったよ。」

そんな言葉を最後に、ようやっと安寧は取り戻され