黒百合の女帝

400ページ達成記念おまけ
〔遊園地編で割愛したお化け屋敷シーン(およそ4p分)〕

 「あ、お化け屋敷。」

 「ええっ、ちょっと怖いのは……」

 「そっか……。ならしょうがないよね。」

メリーゴーラウンドから少し歩いた場所。

そこにあったお化け屋敷の前で足を止める。

だが、無理強いはいけない。残念だが。本当に。

そんな訳で、お化け屋敷から離れようとする。

が、その時ヤユに腕を掴まれた。

 「いや!いけるかもしれない!」

 「え。でもヤユ、苦手なんでしょ?」

 「お化け屋敷入ったことないから、まだわかんない!」

必死に説得しようとする様に、笑みが溢れる。

彼の厚意を受け取り、お化け屋敷に向かった。

 「ヤユ、泣かないでよね?」


 舞台は呪いの人形屋敷だった。

明治時代に居た、無名の人形職人。

その職人の家に、人形たちの怨念が篭ったとか。

室内を懐中電灯で照らしつつ、廊下を進む。

障子には所狭しに札が貼られていた。

というか、量の問題なのだろうか。

 「ねえユリちゃん、物音がするんだけど……」

 「するね。どこにスピーカーが隠されてるんだろう。」

 「ちょっ、なんか足掴まれてる!」

 「ガムじゃない?」

ヤユの絶叫を聞き流しながら、迷わず突き進む。

ただ、ヤユがしがみついてくる所為で歩きにくかった。

ルート通りに進み続けると、台所に辿り着く。

そこには包丁に刺された人形が転がっていた。

 「なんか血ぃ溢れてるよっ!人形から!」

 「その人形何製?」

 「なんでユリちゃんは怖くないの!?」

 「さあ……あ、見て見て。」

ヤユに声を掛け、床を照らす。

そこには床を颯爽と掛けて行く日本人形が。

それを目撃したヤユが私にしがみ付く。

 「来るな来るな!あっち行って!」

 「私に言ってんの?」

 「ユリちゃんはどこにも行かないで!」

その返事に笑っていれば、日本人形が倒れた。

発条仕掛けなのだろうか。安っぽいなあ。

怖がるヤユの腕を掴みながら、台所を出た。


 次に入った浴室にも赤い血が散乱していた。

鮮血に見えるが、いつ人が死んだんだか。

内心突っ込んでいれば、ヤユが突然息を飲む。

 「どうしたの?」

 「そこ……浴槽にひ、人の足が……」

 「なに?浴槽?」

ヤユの指摘通り、浴槽を懐中電灯で照らす。

するとヤユが大声で悲鳴を上げた。

その女々しい叫声に、大声で笑ってしまう。

 「照らすのやめて!生々しいからあ!」

 「照らした方が人形ってわかりやすくて良いでしょ。」

ヤユに反論し、室内をくまなく照らす。

すると浴室の出口の方にて、人影が落ちた。

それを確認し、良い事を思い付く。

 「そろそろ次の部屋に移ろうか。」

 「ああっ、もう早く出たいよおっ」

 「ヤユ、走ると危ないよ。」

 「でも……ん?ユリちゃんどうしたの?」

浴室を出ると、前を歩くヤユがそう尋ねてくる。

それに対し、わざとらしく問い返した。

 「なにが?」

 「いや、だって僕の肩掴んで……」

 「私、ヤユの肩なんか掴んでないけど。」

その返答を聞くと、ヤユが小さく悲鳴を漏らす。

そしておもむろに後ろを振り向き……。

今日一番の悲鳴を上げ、どこかへ走り去ってしまった。