黒百合の女帝

 顔を上げてみると、カヤが缶を見つめていた。

 「カヤ、飲まないの?」

 「あっ、いえ。飲みます飲みます」

カヤは焦るようにそう言うが、再び缶を眺める。

そして躊躇を見せた後、缶の淵に口を付けた。

その姿を笑顔で眺めていれば、眉を顰めるカヤ。

 「なんですか。怖いです」

 「いや?もしかしたら恥ずかしがってるのかなあって。」

私の指摘に、カヤがわずかに硬直した。

しかし次の瞬間には缶を潰し、ベンチを立つ。

ごまかしたいのだと逆に分かり易い動作だった。

 「そんな。何に恥ずかしがるっていうんですか」

言葉こそは澄ましているが、声が裏返っている。

それに笑みを零すと、彼が反論のため口を開く。

という時、丁度カナルが公園に入ってきた。

カヤは口を閉ざすと、そっぽを向いてしまった。

 「早いな。ところで、喧嘩でもしたのか?」

 「別に。あっちが拗ねてるだけ。じゃ、行こっか。」

缶を潰しながら、カナルの跡を付いて行く。

振り返ると、カヤも背後を付いて来ていた。