黒百合の女帝

 「それにしても、ここまでする必要ありました?」

 「私一人でどうにかなっただろうってこと?」

それを聞いた途端、カヤは頭を横に振った。

どうやら、私が怒っていると勘違いしたようだ。

実際は腹立っていないし、その疑問は真っ当だ。

 「相手の人数が把握できなかったからね。」

 「まあ確かに……」

 「それに加えて、ミヤビが来ないと奴らが嶺姫の事を漏らしてたかもだし。」

 「ああ、喧嘩ができることは隠してるんでしたっけ」

曖昧そうな返事に、一つ頷いて見せる。

とにかく、邪魔者が排除できて良かった。

ユウヒらの護衛がないだけで、狙われてしまう。

今回の件だって、サクラを襲えば良いのだ。

彼女を人質にして、嶺春に条件を呑んで貰う。

それで良いのに、彼女には嶺春の守りがある。

だから味方の居ない私を誘拐した……。

そこで唐突に、未だ残る疑問を思い出す。

結局、ヤナギの正体は何なのだろう。

本来は嶺姫を誘拐しようとしていたのでは。

という仮説もあったが、進展はない。

ただ、ヤナギは弟に異常な執着を見せる。

この四ヶ月で得た情報はそれのみだ。

ただし、ヤナギの弟は百鬼夜行所属。

そして嶺春は百鬼夜行を狙っていた。

ヤナギは嶺春を潰す事が目的……。

これで、彼に新たな仮説が出来た。

まあ、この件はまた後でで良いだろう。