黒百合の女帝

 事前に狙われている事には気付いていた。

麓冬倉庫に戻り、椅子に深く座り込む。

制服を隠す為、ロングコートは脱がなかった。

カヤからコーヒーを貰い、数日前を回想する。

ノームから私とサクラの情報を買った奴が居る。

そう聞いていた時点で、予感はしていたのだ。

参考人A ……大元と言ったか。

彼の友人もなんたらかんたらの一員なのだろう。

大して知らないが、大元は切った方が無難か。

いや、女帝の正体が嶺姫とは知られていない。

ならば切る必要もないか。

 「それにしても、今は靴の中に隠すGPSなんてあるんですね」

隣に座るカヤが、私の足元を見ながら言う。

私の足元には一足のスニーカーが転がっていた。

その隣には、裏返された中敷が。

それを拾い上げ、GPSトラッカーを外す。

ここ数日、私は靴にGPSトラッカーを隠していた。

これにより、カヤに位置情報を届けるのだ。

それに加え、メッセージアプリの活用。

昨今、文章の代わりに絵を送る人は多い。

私も同様に、多数のスタンプを使用している。

そのスタンプに、私たちは別の意味を与えた。

例えば、熊がハートを飛ばしているスタンプ。

これは『助けてくれ』の合図だった。