黒百合の女帝

 「振られたんだよ。俺が」

そこでようやく、その笑みが自嘲だと理解した。

何かを返すべきだと焦るが、言葉は出てこない。

ヨウがどれほどサクラちゃんを愛していたか。

それを知っているからこそ、言葉が出なかった。

ヨウはそれを察してか、笑みを朗らかにした。

 「ごめんな、急にこんなこと言って」

 「いや……大丈夫。それと、ごめん」

 「謝んなって。何でもかんでも謝るのがお前の悪癖だ」

僕を叱りながら、ヨウが立ち上がった。

鞄を背負ったあたり、もう帰るのだろう。

僕も席を立ち、玄関まで見送りに行く。

 「じゃあな、ヤユ。チョコ楽しみにしてんぞ」

 「うん……じゃあね」

手を振るが、あまり手に力が入らない。

ヨウが帰った後も、僕はそこから動けなかった。