黒百合の女帝

 ちょうどその時、幹部室の扉が開いた。

思わず体を硬直させ、鞄を抱き寄せる。

どうせ渡すのだから意味はない。

にも拘らず、なぜかチョコを隠したがっていた。

 「ハッピーバレンタインデー!いや〜、今日は寒いね」

背後から、サクラの明るい声音が聞こえてくる。

そんな中、俺は動けずに立ち尽くしていた。

でも、ここでチョコを渡すわけにはいかない。

意を決して、サクラの方に振り向いた。

 「サクラっ、さっき、八雲に呼ばれてたぞ」

 「え?草希くんが?なんだろ」

 「わからない。取り敢えず一緒に行こう」

適当な理由を作り、幹部室を出る。

総長たちは多分察しているだろう。

それが恥ずかしくて、振り返らずに歩いた。