黒百合の女帝

 「ヤユって絶叫系行ける?」

台湾カフェから退店し、公式サイトを開く。

するとヤユは首を捻り、苦笑を浮かべた。

 「わかんないや。そういうの乗ったことなくて」

思わぬ返答に相槌をし、向こうの上空を指す。

 「じゃあ、実際に乗ってみて確かめようか。」

私が指した先は、ジェットコースターだった。


 という訳で、長蛇の列に並んだのだが。

順番が近付く度、ヤユの顔色は悪くなった。

その手にはスマホと装身具が握られている。

 「ねえねえ、ジェットコースターで酔うってほんと?」

 「人によるかな。私は平気だけど。」

スマホの画面を向けながら、問うて来たヤユ。

液晶には『絶叫マシンを楽しむコツと注意点』というサイトが表示されていた。

そこには装飾品などを取るようにも書いてある。

そこで私も念の為、イヤリングを外しておいた。

ヤユの質問の数々に答え続け、十分後。

ようやっと私たちの番が回って来た。

座席に乗り込むと、ヤユが早口で呟き出す。

 「安全バーが壊れたらどうしよう……投げ出されたら……前の人のスマホとかが飛んで来ちゃったら……」

 「さっき『ジェットコースター 事故』で検索したでしょ。」

 「だって怖いんだもんっ。やっぱ乗らなきゃよかった……」

足を震わせ、安全バーを強く握り締めるヤユ。

その様子が面白く、笑いをなんとか抑える。

そうこうしているうちに、ジェットコースターが動き始めた。