黒百合の女帝

 「君、喧嘩慣れしてるね。調整の仕方がわかってる」

 「少し格闘技を習っていまして。」

背後から聞こえてくる、“優しい人“の声色。

顔が見えなくとも、胡散臭い笑みが想像できる。

 「ふぅん。でもさ、こういう人って珍しいんだよね」

そう言うと、男は強制的に私を振り向かせる。

初めて直視した彼は、想像以上の美形だった。

弧を描く口角に、柔らかい目元。

艶やかな黒髪に、白肌と映える黒眼。

揺れると小さく鳴る、右耳の鈴ピアス。

そんな妖艶を体現した美男が、私の手を取り。

 「ね、ちょっとお礼も兼ねて話さない?」

などと、ナンパ紛いのお誘いをしてきた。