黒百合の女帝

 「ひゅ〜。さっすがだね」

 「そう。なら良かった。」

ハラによる歓声に答えながら、後者を一瞥する。

まだ物足りない。もう少し暴れたい。

そう思っての観察だったが、すぐに諦める。

先程聞こえてきた、金属が凹む音の正体。

それは壁に設置された、室外機の音だ。

真っ白の新品であろう室外機。

にできた窪みと、こびりつく鮮血。

そして前者の額から垂れる血……

常人なら間違いなく躊躇する動きだ。

なのにも拘らず、彼は平然としている。

つまり、喧嘩慣れしているということ。


 彼は危険人物。関わらない方が良い。

そう判断し、即座に体の向きを変え。

 「じゃあこれで。」

と一人で逃げようとしたところ。

後ろから突然、右手首を掴まれた。

 「あ、待って待って。まだ行かないで」

 「急ぎの用事があって。ごめんなさい。」

 「いやいやちょっと待ってよ。ね?」

その手を振り払うこともできた。

しかし敢えて、その体勢を維持してみる。