黒百合の女帝

 という事で、路地に入った訳だが。

目に入るのは、二つの人影。

片や体躯が大きい、半グレの成人男性。

片や細身で身なりの良い成人男性。

前者の方は尻餅をつき、額から出血。

に対し、後者は一見無傷……

あ、後者と目が合った。

 「おーいそこの君たち!危ないから離れな!」

 「えー、俺たちのことですか〜?」

 「そうだよ〜!巻き込まれても……」

 「おいガキ!ガキ!ガン飛ばしてんじゃねえぶち、ぶち殺すぞ!」

ハラと後者との会話に、そんな横槍が入る。

視線を移せば、いつの間にやら大男が立ち上がっていた。

呂律が回っていないし、掠れた怒号が煩い。

となれば、前者を潰そう。


 そう判断した後、ハラを置いて走り出す。

すると標的は慌てたのか、咄嗟の前蹴り。

それを躱すため少し下がり、その足を腕で払う。

まんまと相手は体勢を崩し、前方に倒れ掛け……

その隙を狙い、一瞬で間合いを詰める。

そして素早く、肘でその顳顬(こめかみ)を打てば。

相手は平衡感覚を失い、いとも容易く倒れた。

図体と態度は一丁前の癖に、実力なしか。